帰化は簡単になったのか？人口減少と政策の影響を検証

2025年6月25日

帰化が簡単になったという噂の背景

最近、日本への帰化が「以前より簡単になった」と感じる人が増えています。その背景には、深刻な人口減少や急速な高齢化への対応として、政府が外国人の受け入れに積極的な姿勢を示していることがあります。ただし、これは在留資格に関するものであり、国籍取得とは別の話です。帰化制度そのものは、制度上ほとんど変化していないのが現実です。

Recently, many believe that naturalization in Japan has become easier. This perception is linked to the government’s active foreign labor policy to address aging and population decline. However, this applies to residency—not nationality. The naturalization system itself remains unchanged.

帰化要件は現在も厳格

日本で帰化するためには、5年以上の居住歴、素行が善良であること、日本国内での安定した生計があること、日本語能力など、複数の要件をすべて満たす必要があります。これらの条件は法務省のガイドラインで明確に定められており、審査では厳格にチェックされます。特に日本語の読み書きや収入の安定性は重要視されており、基準の緩和は見られません。

To naturalize in Japan, applicants must meet multiple requirements, including five years of residence, good conduct, financial stability, and Japanese language ability. These are clearly defined in Ministry of Justice guidelines and strictly reviewed. Language and income stability remain key points.

許可率の高さが誤解を招く

帰化の許可率はおおむね80〜90％と高く、一見すると簡単に思えるかもしれません。しかし実際には、法務局での事前相談の段階で要件を満たさないと判断された場合、申請が受理される前に取り下げとなるケースも多くあります。そのため、統計上の許可率は高く見えても、実態としてのハードルは依然として高く、事前準備と書類精度が極めて重要です。

The approval rate for naturalization appears high at 80–90%, but many cases are withdrawn before formal submission during pre-application consultations. As a result, statistics give the illusion of ease, but the actual process remains strict and preparation-intensive.

政策は受け入れ拡大、だが帰化は別

政府は特定技能制度や永住者資格などの拡充により、外国人の中長期的な在留を促進しています。これは主に労働力確保を目的とした制度強化であり、国籍取得を推進するためのものではありません。帰化は依然として「日本人になる」ための厳格なプロセスとみなされており、慎重な審査と高度な要件が求められ続けています。

Japan promotes long-term residency through programs like Specified Skilled Worker and Permanent Residency to secure labor. These policies are not aimed at increasing naturalization. Becoming Japanese remains a serious, carefully reviewed process with high standards.

制度変更なし、難易度は維持

2025年現在、帰化の根拠法である国籍法や、その審査基準に関して大きな改正や緩和措置は行われていません。一部の実務現場では事情に応じた柔軟な運用がなされることはあるものの、制度全体としては依然として厳格です。「帰化が簡単になった」という印象は、個別の事例やSNS上の情報によって広がっている側面も否定できません。

As of 2025, there have been no major changes or relaxations to the Nationality Act or its screening criteria. Some case-by-case flexibility exists, but overall, the system remains strict. The idea of easier naturalization is partly driven by anecdotal reports and social media.

帰化は「簡単」ではない

帰化申請には1年近くの審査期間がかかることもあり、本人の状況説明や細かな書類提出が求められます。さらに、審査官の判断で追加資料を求められることも珍しくありません。日本での生活基盤、家族構成、日本語力、税金や年金の納付状況など、多面的な審査がなされます。申請者にとっては決して「簡単」な制度ではないのです。

Naturalization may take up to a year, requiring detailed documents and explanations. Additional materials may be requested during review. Examiners consider factors like family, language skills, and tax history. For applicants, it is far from an “easy” process.