外国人が日本で直面する最初の壁
日本に来る外国人は、留学・仕事・家族滞在・観光など、その目的はさまざまです。しかし、目的が違っても共通して直面するのが「生活の壁」と「制度の複雑さ」です。行政書士として実務の現場で外国人の方々と向き合っていると、日本社会における“つまずきポイント”は驚くほど似通っています。そして多くの場合、困りごとは単体で起きるのではなく、言語・手続き・文化・人間関係が複雑に絡まりながら、生活の基盤を揺さぶっていきます。
特に、日本人が当たり前だと思っている制度やルールが、海外ではまったく一般的でないことも多く、説明なしでは理解が難しいことが多いのが現実です。外国人の方が「日本は便利で安全な国だと思って来たのに、生活の最初の段階でつまずく」と話される場面は珍しくありません。ここでは、行政書士として日々接している実例も踏まえながら、外国人が日本に来て最も困ること、その背景、どのように生活が動きづらくなるのかを深く掘り下げます。
まず最も大きな壁と言われるのが、言語の問題です。日本の社会は非常に日本語中心で成り立っており、契約、役所、医療、学校、就労など、すべてが「日本語ができること」を暗黙の前提にしています。英語がある程度通じる国とは異なり、「最低限の生活であっても日本語の読解力が必須」になる場面が想像以上に多くあります。例えば賃貸契約書の条文は、日本人でも理解しづらいほど難しいものです。まして外国人にとっては専門用語が並ぶ日本語の文章は障壁が高く、こちらが丁寧に説明しても意図が伝わりにくいことも珍しくありません。
制度・手続きの複雑さによる生活の停滞
また、役所の手続きの複雑さにも苦しむ外国人は多いです。住所変更、国民健康保険加入、年金、児童手当、マイナンバー、税務関係など、生活に関わる事務は多岐にわたります。さらに在留手続きとなると難しさは格段に増し、在留カードの更新・在留資格変更・資格外活動許可・永住申請など、専門性の高い手続きが頻繁に発生します。行政書士として手続きを支援していると、「手続きが難しい」というより、「なぜその手続きが必要なのか」という理解がそもそも追いついていない方が多いことに気づきます。これは制度そのものが外国人向けではなく、日本人向けに設計されていることが原因でもあります。
さらに、自治体ごとに手続きの流れが微妙に違うことも混乱を招きます。役所の窓口での説明が難しい言い回しで行われる場合、途中で理解が追いつかず、必要書類が不足したり、期限を逃してしまうケースもあります。特に在留期限に関わる遅れは致命的で、ほんの小さな誤解が後に大きな問題へとつながることがあります。実際に、「知らなかった」「説明が理解できなかった」という理由だけで不許可につながるケースもあり、これは外国人の方にとって精神的な負担が非常に大きいものです。
生活の基盤を揺るがす要因として、「住まいの確保」が難しいという現実もあります。近年は改善されつつあるとはいえ、依然として外国人を敬遠する物件は少なくありません。保証人がいない、在留期間が短い、コミュニケーションへの不安などを理由に断られることがあります。保証会社の審査も外国人には厳しく、日本語が流暢であっても「外国籍」という理由だけで慎重に扱われることがあります。行政書士として同行することもありますが、日本語能力や在留期間の長さだけではカバーしきれない壁が存在しています。
住まいの問題は、生活のあらゆる面に波及します。住所が決まらなければ銀行口座も作れませんし、携帯電話契約もできません。そもそも住所がなければ会社に雇ってもらえないケースもあり、生活の立ち上がりが大きく遅れてしまいます。日本では「住所」が身分証明と同レベルの役割を持つため、住まいを確保できないというのは想像以上に深刻な問題なのです。
文化・コミュニケーションの違いによる孤立
また、人間関係の難しさ、孤独感も無視できない大きな課題です。日本の文化的な特徴として、「空気を読む」「相手の気持ちを察する」という暗黙のコミュニケーションが求められる場面が多くあります。これは外国人にとって非常に理解しづらく、意図せずルールを破ってしまうケースが多々あります。例えばゴミ出しの分別や曜日、騒音に関する感覚の違いなど、生活習慣の差からトラブルが生じることがあります。注意されたとしてもその理由が分からず、「自分が悪いのか?」「どうすれば良いか分からない」という混乱を引き起こし、さらに孤立を深めてしまうことがあります。
職場においても、言語や文化の違いがトラブルを生むことがあります。仕事内容の説明が曖昧なまま始まってしまい、結果として「言われた通りにしていない」と叱られてしまうこともあります。また、日本語が不十分な状態で責任の重い仕事を任され、不安の中で働き続けている方も多いです。特に飲食、介護、製造といった業界では外国人の受け入れが多いため、人手不足の現場で教育が追いつかず、誤解やストレスを生んでしまうケースが目立ちます。
さらに、日本特有の「曖昧なルール」「暗黙の了解」が理解されず、トラブルにつながる場面もあります。日本人同士であれば自然に理解しているルールが、外国人にはまったく伝わっていないことがあるのです。例えば「仕事中にどの程度雑談が許されるか」「どこまで自主的に動くべきか」「指示待ちが悪いとされる理由」など、文化的な背景の違いから認識がずれてしまうことがあります。これは決して外国人の能力の問題ではなく、日本社会が前提としている価値観が外国人に共有されていないだけなのです。
複数の要因が連鎖して生活を揺るがす現実
行政書士として現場で感じるのは、困りごとは単独で発生するのではなく、複数の要因が連鎖して起こるということです。言語の壁があることで手続きが理解できず、手続きが遅れることで生活が不安定になり、生活が不安定になることでメンタルが弱り、孤立が深まっていく――。このような悪循環に陥る方は珍しくありません。
特に、在留手続きにおいては小さな誤解や見落としが後の不許可につながりやすく、生活そのものに直結するため影響が大きいです。外国人本人は「何となくこれで大丈夫だろう」と思っていても、実際には必要書類が不足していたり、証明の仕方が間違っていたりすることがあります。こちらが説明しても、日本語の微妙なニュアンスが伝わらず、誤った解釈のまま進めてしまうケースも少なくありません。
さらに、日本の制度が外国人を前提に作られていないため、役所での説明が外国人に寄り添っていないという問題もあります。「この書類を出してください」「この手続きをしてください」という説明だけでは意味が分からず、本人はただ指示された通りに動いているつもりでも、途中で必要な理解が欠けてしまうのです。その結果、「なぜこうなったのか分からないまま、不許可になった」「期限が切れそうで急いでいるが、何をすればいいか分からない」という深刻な状況に追い込まれることがあります。
また、医療の場でも困りごとが多くあります。症状を正確に伝えられない、医師の説明が理解できない、薬の飲み方が分からないなど、命に関わる問題が発生することもあります。本人は必死に伝えようとしても、言葉の壁が立ちはだかり、思うように治療が進まないことがあります。
経済面でも、日本の税金や社会保険制度は複雑で、仕組みを理解するのが難しいという声が多いです。給与明細の読み方が分からず、「なぜこんなに引かれているのか分からない」と感じる外国人の方は多いです。さらに、「年金は将来本当に受け取れるのか」「帰国したらどうなるのか」など、制度の疑問点が多いにもかかわらず、説明できる人が周りにいないという状況が続いています。
子育て世帯の外国人にとっては、学校とのやり取りも大きな課題です。学校からのプリントが読めない、PTAの活動内容が分からない、先生とのコミュニケーションが取りにくいなど、子供の教育に関わる部分で不安を抱えている家庭も多いです。特に、母国とは学校文化がまったく異なるため、「何が普通で、何が非常識なのか」という基本的な感覚がつかめず、戸惑うことも少なくありません。
さらに、外国人が最も言いづらい困りごとの一つが「孤独」です。友達ができない、相談相手がいない、家族は遠く離れている、文化が違いすぎて日本人と深い関係が築けない、といった悩みを抱える方は多いです。実務で支援していると、「生活はなんとかできるけれど、心が疲れている」という声を聞くことは珍しくありません。孤独は生活力を奪い、手続きのミスや職場でのトラブルにもつながります。
これらすべてを総合して考えると、外国人が日本に来て最も困ることは、「言語」「制度」「文化」「孤独」が複雑に絡み合うことによって、生活のあらゆる歯車が噛み合わなくなることだと言えます。単純に「日本語が分からないから困る」というレベルではなく、「日本社会が日本人向けに作られ過ぎているため、外国人が生活の基盤を築くのに想像以上の労力を必要としている」という根本的な構造問題が存在しているのです。
行政書士として支援している立場からすると、「知らない」「理解できない」「相談できない」という三つの壁が重なると、生活が大きく揺らぎます。手続きはもちろん、住まい、仕事、人間関係、教育、医療など、あらゆる場面につまずきが広がっていきます。だからこそ本来は、日本社会全体がもっと分かりやすく、外国人が相談しやすい環境を整える必要があります。現実にはまだ十分とは言えませんが、少しずつ変わりつつあるのも事実です。
外国人が日本で安心して暮らすためには、制度の理解を助ける専門家や、生活の不安を共有できるコミュニティの存在が不可欠です。そして、行政書士としては、ただ手続きを代行するだけでなく、「なぜこの手続きが必要なのか」「どのように生活に関わるのか」を丁寧に説明し、生活全体を支える視点で寄り添うことが求められていると感じます。外国人が困らない社会を目指すためには、日本側の理解と支援の在り方が欠かせません。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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