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日本の「外国人不動産データベース化」は世界の潮流と同じ方向なのか

日本の動きは“世界の潮流”と同じ方向にある

日本政府が、外国人による不動産所有を一元的に把握するためのデータベース構築に向けて動き始めています。マンションなどの不動産登記には国籍の届け出が不要である一方、農地や森林では国籍の届け出が求められるなど、制度が分断されてきた歴史がありました。政府は、こうした分断を解消し、国籍情報と不動産所有を紐付けることで、所有実態を正確に把握しようとしています。

この方針は、国内で高まる「外国人による買い占め」への不安への対応という側面もありますが、実は日本だけが独自に進めているものではありません。むしろ日本は、国際社会がすでに力を入れて進めている“不動産の透明化”という大きな潮流にようやく追いつこうとしている段階と言えます。世界では、不動産がマネーロンダリング、資金隠蔽、オフショア資金の逃避先として利用されてきたことから、その透明性を高めることが急務となっており、実質所有者を把握する仕組みの整備が共通の課題となっているのです。

特に、国際的な資金移動が加速した現代では、個人だけでなく、海外法人、信託、複雑な持株会社を通じた不動産取得が容易になっています。こうした構造は、資金の出所や最終的な所有者を隠しやすく、犯罪資金や汚職資金が不動産市場に流れ込むリスクを高めてきました。そのため、欧米を中心に「不動産は誰が最終的に所有しているのか」を可視化する法整備が急ピッチで進んでいます。

日本政府の取り組みも、この国際潮流に合わせる形で動き出したものです。不動産ベース・レジストリを中核に、不動産登記情報、森林・農地台帳、国土利用計画法に基づく土地取引情報などを横断的に連結し、統合的に把握する仕組みへと進化させようとしています。こうした方向性は、単なる国内問題への対処ではなく、世界基準に合わせた透明性確保の一環と言えるでしょう。

欧米各国では不動産の透明化がすでに国際標準となっている

日本の制度改革を国際的な文脈で理解するためには、欧米の動向を見ることが非常に参考になります。たとえば、英国ではロンドンの高級不動産市場が海外マネーの流入で急拡大した結果、誰が最終的な所有者なのかが分からない物件が大量に増え、深刻な問題となりました。これを受けて英国政府は2022年、「Economic Crime(透明性強化法)」を施行し、海外法人が英国で不動産を取得する場合には、必ず実質所有者の登録を義務付けました。

この制度によって、従来はオフショア法人を介して匿名で所有されていた不動産についても、実質所有者の情報が明らかになりつつあります。同様の動きはEUでも加速しており、加盟国ごとに異なっていた不動産登記制度を統一し、所有者情報と実質所有者情報を連結したデータベースをEU全体で共有する構想が進められています。これは不動産市場を利用した犯罪資金の流入を防ぐための、安全保障上の取り組みとしても位置づけられています。

一方、米国では外国資本による農地の買収や住宅市場への影響が社会問題化しています。価格高騰や生活基盤への圧迫に加え、軍事施設周辺の土地が外国資本に取得されるケースもあり、安全保障の観点からも議論が進んでいます。そのため、米国では州レベルで外国資本による不動産取得を制限する法律が制定されつつあり、連邦政府による審査制度の強化も進んでいます。

これらの動きは、「外国人を排除する」という方向性ではなく、「不透明な所有構造を排除する」という考え方に基づいています。つまり、透明性を高めることで、健全な投資や取引を妨げることなく、不正資金やリスクの高い取引を抑制するというバランスが重視されているのです。

世界全体として、不動産の透明化はすでに国際標準となっており、各国がそれぞれの事情に応じた制度改革を進めています。日本がようやく動き出したのは、むしろ自然な流れであり、国際社会の価値観に沿ったものです。

国際機関も「不動産分野の透明性強化」を各国に求めている

世界の制度改革を後押ししているのは、個々の国の判断だけではありません。OECDやFATF(金融活動作業部会)といった国際機関も、不動産市場の透明性の低さが国際的なリスクになっていると警鐘を鳴らしてきました。特に、法人や信託を利用した匿名所有は、マネーロンダリングの温床となるとして、実質所有者情報の登録と共有を強く求めています。

OECDの2024年報告書では、不動産の国際取引に関して、各国の制度に大きなばらつきがあることが問題視されました。国籍情報の取り扱い、不動産取引の届け出、法人の背後にいる株主の把握など、透明性に必要な要素が国ごとにまちまちであるため、犯罪資金が国境を越えて移動しやすい環境を生んでいると指摘しています。

また、透明性国際(Transparency International)が発表した「OREO Index」では、多くの国で不動産市場が依然として“匿名所有の温床”になっていると評価されました。特に、オフショア法人を使った所有の把握が不十分な国が多く、資金の出所や所有者の実態が分からない不動産が世界中に多数存在している状況が問題視されています。

こうした国際機関の報告は、日本にも大きな影響を与えています。日本は国際的なマネロン対策や税務情報の交換などで協力関係を深めており、不動産分野での透明性確保もその一環として求められています。今回のデータベース構築の動きも、国内の不安だけでなく、国際社会との協調やルール作りの中で必要性が高まっていたものと考えられます。

不動産所有情報を正確に把握することは、単に安全保障や住宅政策の範囲に留まりません。世界全体の資金流通を健全化し、透明性の高い市場を形成するための重要な土台となるのです。

日本はようやく世界の土俵に立った段階にある

日本国内で外国人の不動産取得が議論されると、「買い占め」「水源地」「重要施設周辺」といった個別の不安が注目されがちです。確かに、地域住民にとって不動産は生活基盤そのものであり、誰が所有するかは大きな関心事です。しかし、国際的な視点で見れば、日本が動き出した背景はもっと広い文脈にあります。それは「不動産の透明化」という世界共通の課題に取り組むことです。

今回、日本が整備を進めるデータベースは、不動産登記、農地台帳、森林情報、国土利用計画法の届け出など、従来は分断されていた情報を統合するものです。さらに、法人の主要株主や役員の国籍情報まで把握し、海外居住者による不動産取得も対象に含めるなど、透明性を徹底する方向に向かっています。

これらの仕組みは、過度に外国人を排除するためのものではなく、透明性を確保しながら健全な市場を維持するためのものです。透明な市場は、真面目な投資家にとっても魅力的であり、結果として日本の不動産市場全体の信頼性を高める効果があります。

また、透明化の動きは日本だけで完結するものではありません。国際協調の枠組みの中で、他国との情報交換や相互監視が進むことで、世界全体の資金流通が健全化していきます。日本が今回の方針を打ち出したことは、ようやく世界の土俵に立ち、共通課題に取り組むスタートラインに立ったと言えるでしょう。

今後、日本がどこまで透明性を高められるのか、法人・信託を含めた所有構造の把握をどこまで徹底できるのかは、国際的な視点からも注目されます。透明性を重視する方向で制度が成熟すれば、外国資本の流入をむしろ健全な形で受け入れられるようになり、日本の不動産市場の健全性と国際競争力の両立につながっていくはずです。

最後まで読んでいただきありがとうございました。

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