日本で暮らしている外国人の方と接していると、「久しぶりに母国へ帰ります」「家族に会えるので楽しみです」といった明るい報告をよくいただきます。長い間会えていなかった家族との再会は、何よりも特別な時間です。しかし、行政書士として同時にお伝えしたいことがあります。
「帰国の準備はできていても、日本に戻る準備はできていますか?」
これは決して大げさな問いではありません。実際、空港でのちょっとした確認不足により、持っているはずの在留資格(ビザ)が出国と同時に消滅してしまうというケースが全国で起きています。
本記事では、一時帰国を予定している外国人の方に向けて、再入国制度の仕組み、よくあるミス、そしてビザを守るために必ず押さえておくべきポイントを、行政書士の視点から丁寧に解説します。
日本に戻れなくなるリスクは、正しい知識があればほぼゼロにできます。どうか出国前に一度だけ、この記事を読みながら確認していただければと思います。
「みなし再入国許可」とは何か――便利さの裏に潜む落とし穴
現在、日本に中長期で在留している外国人の多くは、母国へ一時帰国する際に「みなし再入国許可」を利用します。これは非常に便利な制度で、事前に入管へ行かなくても、以下の条件を満たせば空港でスムーズに出国できます。
- 有効なパスポートを持っている
- 有効な在留カードを持っている
- 出国後1年以内(かつ在留期限内)に日本へ戻る予定である
一見すると難しいところはありませんが、この制度には多くの人が気づいていない重大な注意点が存在します。
出国審査へ向かう途中で記入する再入国EDカードには、「みなし再入国許可による出国を希望します」というチェック欄があります。ここをチェックし忘れたまま出国審査を通ってしまうと、その瞬間に在留資格が失効します。永住者であっても例外ではありません。
失効してしまえば、二度と元のビザで日本には戻れず、再度新規申請を行う必要があります。たった一つのチェック漏れが日本での生活を失う原因になるため、出国前に必ず指差し確認をしておくことが重要です。
在留カードの期限は大丈夫? 期限ギリギリの帰省は危険です
みなし再入国許可は在留期限が切れるまでしか有効ではありません。つまり、どれだけパスポートが有効であっても、在留カードの期限が切れた時点で再入国はできなくなります。
次のようなケースは特に注意が必要です。
- 帰国中に誕生日を迎えて在留期限をまたぐ
- 残り日数が少ないまま出国する
- 予定外の事情で帰国が延びる
これらは珍しいことではなく、実際に起きやすい事例です。期限が過ぎていれば、たとえ翌日に更新予定であっても入国はできません。
そのため出国前には以下を必ず確認してください。
- 在留カードの期限は十分か
- 日本に戻る予定日が期限を超えていないか
- 不安がある場合、出国前に更新申請を行ったか
更新申請中は特例で滞在が認められる場合もありますが、すべてのケースで安全とは限りません。少しでも不安がある場合は、専門家への相談が有効です。
1年以上日本を離れるなら「正規の再入国許可」が必要
母国の家族の介護、仕事の都合、留学など、日本を長期間離れる理由はさまざまですが、1年以上離れる可能性がある場合は「みなし再入国許可」を利用してはいけません。
その場合、必ず出国前に入管で「再入国許可(正規)」を取得し、パスポートにシールを貼ってもらう必要があります。
再入国許可の概要は以下の通りです。
- 手数料:4,000円(1回)または7,000円(数次)
- 有効期間:最長5年(在留期限内)
これを取得しておけば、1年以上海外に滞在しても在留資格が失われることはありません。
次のような方は正規の再入国許可を必ず取得すべきです。
- 介護や療養で帰国期間が読めない
- 企業から長期出張を命じられている
- 研究や留学で滞在期間が確定していない
- 国の事情で帰国が延びる可能性がある
「戻れるはずだったのにビザが消えていた」という例は少なくなく、すべて事前の準備不足から生じたものです。
出国前に必ず行いたい「再入国チェックリスト」
ここまでの内容をもとに、一時帰国の前に必ず確認すべき項目を整理しました。このチェックを行うだけで、再入国トラブルはほぼ防止できます。
- パスポートの有効期限は十分か
- 在留カードの期限を確認したか
- 帰国予定日が期限を超えていないか
- EDカードのチェック欄を確認したか
- 1年以上滞在する可能性がある場合、正規の再入国許可を取得したか
- 自分のケースに不安要素は残っていないか
特に、家族全員で帰国する場合や、在留期限の扱いが複雑なケースでは注意が必要です。少しでも不安があれば、出国前に相談することでトラブルを未然に防ぐことができます。
一時帰国は楽しみであり、心の休息にもなる大切な行事です。しかし、日本に戻れなくなってしまえば、その喜びは大きな不安に変わってしまいます。正しい知識を持って準備をすれば、リスクは確実に減らすことができます。
もし、在留期限の判断が難しい、長期滞在になりそう、家族の事情で予定が読めないなど、不安な点がある場合は、どうぞ気軽にご相談ください。行政書士として、皆様が安心して帰国し、また日本での生活を続けられるようサポートいたします。
行ってらっしゃい、そしてまた、日本へおかえりなさい。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
「こんなことで相談していいの?」
—— 大丈夫です! あなたの不安に丁寧に向き合います
フジ行政書士事務所では、日本で暮らす外国人の方が安心して生活できるよう、ビザのことはもちろん、手続き・仕事・暮らしの中で感じる不安や悩みにも寄り添っています。
「誰に相談したらいいかわからない」そんなときこそ、フジ行政書士事務所にご相談ください。
あなたにとっていちばん良い形を、一緒に考えていきます。
※LINEをご利用でない方は、▶ お問い合わせフォームはこちら からもご相談いただけます。
