広がる先入観とその背景
日本では、外国人が増えると治安が悪化するのではないかという声を耳にすることが少なくありません。特に、外国人が関わる事件やトラブルがニュースやSNSで取り上げられると、その印象が一気に広まり、「やはり外国人は危ない」という短絡的な結論に結びつきやすくなります。こうした先入観は、外国人の受け入れ政策や地域社会の雰囲気に影響を与える可能性があります。
しかし、統計や調査の結果を丁寧に見ていくと、このイメージと現実の間には大きな隔たりがあることがわかります。過去十数年で在留外国人の数は確かに増加していますが、それに伴って犯罪が比例して増えているわけではありません。むしろ、全体に占める外国人の犯罪の割合は下がっている傾向さえあります。
報道では凶悪事件が目立つため、外国人犯罪=重大事件という印象が生まれやすいのですが、実際には窃盗や在留資格に関する違反といった比較的軽微なものが多くを占めています。もちろん、これらも軽視してよいものではありませんが、治安全体を揺るがすほどの影響を与えているわけではないのです。
統計が示す傾向――増加と悪化は直結しない
長期的なデータや分析を見ると、外国人の増加と治安の悪化は必ずしも結びついていないことが明らかです。外国人労働者や留学生の数は年々増加していますが、外国人による犯罪件数は横ばい、あるいは減少傾向を示す時期もあります。この事実は、「人が増えれば犯罪も増える」という単純な構図が成り立たないことを物語っています。
外国人の多くは20代から40代の働き盛り世代であり、日本人の同年代と比べて特別に高い犯罪率を示しているわけでもありません。地域別に見ても、外国人が多く住む地域が必ずしも治安が悪いわけではなく、日本人同士でも地域によって犯罪発生率が異なるのと同じように、外国人の割合だけで説明できる問題ではないのです。
また、入管法違反や資格外活動といった事案は一定数存在しますが、それらは制度の複雑さや雇用環境の不備とも関係しており、必ずしも外国人個人の資質に起因するとは限りません。制度の改善やサポート体制の充実によって、減らせる可能性のあるものも少なくありません。
技能実習生に向けられる誤解
外国人に関する誤解や先入観が特に強く現れる分野の一つが技能実習制度です。報道では、失踪やハラスメント被害、劣悪な労働環境といった問題が繰り返し取り上げられ、「技能実習生=不幸な被害者」あるいは「潜在的な問題人物」といったイメージが形成されがちです。
しかし、現場での実態はもっと多様です。調査によれば、多くの技能実習生は職場や生活に満足しており、帰国後も日本で学んだことが役立ったと答える人が大多数です。多くは職場の同僚や地域住民と良好な関係を築き、安定して働いています。
もちろん、賃金未払い、過重労働、ハラスメントといった違法行為は依然として存在しますし、制度改善の必要性は否定できません。また、技能実習生による犯罪もゼロではなく、一部には問題を起こすケースもあります。しかし、その多くは入管法違反や窃盗など非暴力的なものであり、凶悪犯罪はまれです。偏った情報だけを見て技能実習制度や実習生そのものを否定してしまうことは、現実を正しく反映しているとは言えません。
冷静な理解とこれからの課題
外国人と治安をめぐる議論では、感情や思い込みが事実よりも強く影響してしまうことがよくあります。しかし、入国時には厳しい審査が行われており、多くの外国人は制度のフィルターを通って来日しています。全体の傾向を見れば、外国人が増えることと治安の悪化は必ずしも直結していません。
むしろ、外国人の存在は労働力の確保や地域経済の維持、文化の多様化といった点で、日本社会に大きな恩恵をもたらしています。人口減少や高齢化が進む中で、彼らの力はこれからますます重要になっていくでしょう。
必要なのは、特定の事件や断片的な情報だけに基づいて判断するのではなく、統計や現場の声を踏まえた冷静な議論です。問題があれば制度を改善し、外国人が地域に溶け込み、安心して暮らし働ける社会を築くことが、結果的に治安の安定にもつながります。
治安を守る鍵は国籍ではなく、制度の運用や社会の受け入れ態勢、そして日常の人間関係にあります。先入観を乗り越え、共に生きるための土台を整えることこそが、多文化共生社会の安定に不可欠な視点なのです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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