資本金要件が6倍に引き上げか――外国人向け「経営・管理」ビザの大改革
日本で会社を設立し経営活動を行う外国人が取得する在留資格「経営・管理」の要件が、大幅に厳しくなります。これまで資本金は500万円以上であれば条件を満たしていましたが、政府はこの基準を一気に3,000万円以上へと引き上げる方針です。金額にして6倍という大改定であり、今後は資金力のある事業計画を持つ外国人起業家しか新規取得が難しくなる見込みです。施行は年内とされ、現在は有識者会議で最終的な調整が進められています。
この変更は単なる数字の改定にとどまらず、日本の外国人起業家受け入れ政策における大きな転換点となります。長らく比較的取得しやすいとされてきた「経営・管理」ビザですが、制度の悪用が増えてきたことで、国は厳格化へと舵を切りました。
なぜここまで厳しくなるのか
今回の見直しの背景には、制度の趣旨に沿わない利用が目立つようになったことがあります。現行制度では、資本金500万円以上、または常勤職員2名以上の雇用という条件のいずれかを満たせばビザが取得できました。このため、事業の実態がほとんどないペーパーカンパニーを設立し、在留資格だけを確保するケースが少なからず見られました。
特に一部地域では、外国人が名義だけの法人を設立して不動産を購入し、その後ほとんど事業活動を行わない事例が問題視されてきました。こうした状況は制度への信頼を損ね、日本で真剣に事業を行おうとする外国人起業家まで不信の目で見られる原因にもなっています。
国はこの状況を改善し、日本経済に実質的な貢献をする外国人起業家だけを受け入れるため、資本金要件の大幅引き上げに踏み切ることを決めました。
改正の方向性と新たなハードル
新しい基準では、資本金3,000万円以上を備えることに加え、常勤職員を1名以上雇用することが同時に求められる見通しです。これまで「資本金」か「雇用」のどちらか一方でよかった条件が、両方とも必須になる方向です。
これにより、十分な資金を持ち、かつ人材を雇用して事業を継続できる体制があることが求められます。言い換えれば、単発の事業計画や短期間の滞在を目的とした法人設立ではビザが取得できなくなります。
結果として、日本国内での雇用創出や経済活動の安定性は高まる可能性がありますが、一方で小規模な事業からスタートしようとする外国人にとっては、参入のハードルが極めて高くなります。
今後の影響と備え
年内の省令改正が予定されているため、早ければ数か月以内に新制度が適用される可能性があります。ここで特に注意すべきは、既に「経営・管理」ビザを持っている人への影響です。新基準が更新時にも適用されるかどうかはまだ明らかになっていませんが、もし適用される場合、資本金を増やすか新たに雇用を確保する必要が出てきます。
また、起業準備中の外国人は、資本金3,000万円という新しい基準を満たす資金計画を立てなければなりません。今のうちに申請を進めれば現行制度での取得が可能ですが、施行後は条件を満たさない限り新規取得は難しくなります。短期間で資本金を増やすのは現実的に難しいため、制度改正前に行動を起こすことが重要です。
この改正は、単に外国人起業家を減らすことが目的ではなく、実際に日本経済や雇用に貢献する事業者を選別するためのフィルターです。将来的には、この厳格化によって外国人起業家の質が向上し、日本でのビジネス環境の信頼性が高まることも期待されます。しかし、その一方で多様な事業アイデアや小規模起業の芽を摘むリスクもあり、バランスの取れた制度運用が求められます。
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