言葉と文化の壁がつくる相談の難しさ
今回の調査では、外国人が生活の中で相談するとき、まず立ちはだかるのが「言葉の壁」だということがはっきりしました。役所や学校、職場といった所属機関では、制度や手続きの説明を理解するために高度な日本語が必要です。そのため、内容がうまく伝わらず、やり取りに苦労する人が多くいます。ある回答者は「役所で説明を受けても、使われる言葉が難しくて頭に入らない。帰ってから自分で調べるが、それでもわからない」と語っています。
一方、家族や友人に相談する場合でも安心とは限りません。文化や価値観の違いから、同じ言葉を使っても受け止め方がずれ、気持ちが伝わらないことがあります。例えば、仕事での悩みを友人に話した際、「それは気にしなくてもいい」と軽く受け流され、余計に孤独感を深めたという声もありました。
自由記述には、「やさしい日本語をもっと広めてほしい」「英語で相談できる人を配置してほしい」といった要望が数多く寄せられています。相談相手や場面に応じた、きめ細かな言語サポートが求められています。翻訳や通訳があっても、専門用語や制度の背景を理解していなければ本当の意味での支援にはならないという指摘も目立ちました。
仕事・情報・在留資格の悩み
仕事の相談は、最も多く寄せられたテーマです。就職や転職のときに在留資格の取得支援が足りないこと、日本特有の職場の習慣や暗黙のルールになじめないこと、多言語スキルを活かせる職場が少ないことなどが挙げられています。ある外国人労働者は「面接で『日本語は問題ない』と言われたのに、実際の仕事では高度な敬語や業界特有の表現が必要で、毎日辞書を引きながら業務をしている」と不安を語っています。
「給与や待遇を公平にしてほしい」という意見も少なくありません。同じ業務をこなしても、日本人社員より昇進が遅れる、ボーナスが低いといった不満も見られました。こうした不平等感は職場への定着意欲にも影響します。
生活に必要な情報提供も課題です。制度や税金、年金などは内容が複雑で、特に日本語に不慣れな人には理解しにくい現状があります。行政のウェブサイトは情報量が多い一方、専門的な言葉や使いにくいデザインが障害になっています。調査には「必要な情報はネットにあると言われたが、検索しても正しい情報かどうかわからない」「地域のルールや手続きの流れを一目で理解できる資料がほしい」という声もありました。
在留資格については、不許可になった理由がわからない、手続きが煩雑で情報が分散しているなどの問題があります。例えば、資格更新のために複数の窓口を回ったが、必要書類が揃わず何度も足を運ぶことになった事例があります。職種ごとに取得条件を整理した案内や、求人情報にビザ取得条件を明記する取り組みが求められています。
住宅・教育・交流に残る壁
住宅探しでは、外国人という理由だけで契約を断られる事例が今もあります。調査には「何件も不動産会社を回ったが、契約直前に『オーナーが外国人は不可と言っている』と断られた」という切実な声もありました。転職などで新しい住まいを探すときや、短期滞在の部屋を見つけるときに苦労することも多く、契約の流れや必要書類に不慣れなためトラブルになるケースもあります。住宅案内や契約サポートの整備が必要です。
教育面では、幼い頃に来日した子どもが、日本語と母語の両方を中途半端に覚えてしまい、アイデンティティの形成が難しくなることがあります。進学や受験に必要な情報が得にくい家庭も多く、「子どもが進学を希望しても、親が制度や手続きを理解できず、情報収集が遅れてしまう」という現実があります。二言語教育や補習授業、保護者への支援が求められています。
交流については、日本人と外国人が接する機会が少ないことが課題です。調査には「地域の行事に参加したくても案内が日本語のみで理解できない」「友人ができても、生活習慣や休日の過ごし方の違いから疎遠になることがある」といった声もありました。地域イベントや文化交流の場を増やすことが、孤立を防ぎ、お互いの理解を深めるきっかけになります。
調査に映る声と映らない声
この調査は、在留外国人の暮らしの課題を知る貴重な資料です。しかし、回答できた人の声に限られるという特徴があります。日本語や調査方法にアクセスできない人、忙しくて参加できない人の意見は含まれていません。そのため、数字に表れていない部分にこそ、より深刻な課題が潜んでいる可能性があります。
自由記述には率直な意見が多く寄せられましたが、行政機関による調査という性質から、批判を控える人もいるかもしれません。数字は全体の傾向を示し、自由記述は具体的な体験や感情を伝えます。両方を合わせて読むことで、より実態に近づけます。
調査結果からは、言葉の壁と制度の複雑さが多くの人に共通する課題であることが見えてきます。同時に、文化理解の不足や無意識の差別、孤立感の解消といった、数字では見えない課題も少なくありません。支援や政策を考えるときには、見えている声と見えていない声の両方に耳を傾けることが大切です。これらの視点を持つことで、在留外国人が安心して暮らせる社会への一歩が見えてくるはずです。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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