日本からアメリカを目指す外国人――背景と現実
日本に来る外国人の中には、日本を最終目的地とせず、次のステップとしてアメリカを目指す人がいます。国際世論調査でもアメリカは渡航希望国として常に首位にあり、高賃金の雇用、英語圏としての国際的キャリアの広がり、多民族社会の暮らしやすさが魅力です。特にIT、医療、研究などの分野では、高い報酬や先端的な環境が整っていることが強い引力になります。
日本は地理的にアジアから近く、安全で安定した社会、比較的取得しやすい就労や留学ビザなどの条件があり、「まず日本で資金や職歴、資格を得てから英語圏を目指す」という戦略が成り立ちます。このような移動は国際移民研究で「ステップストーン型移民」と呼ばれ、日本はその中間地として機能する場合があります。
ただし、アメリカ行きは容易ではありません。就労ビザ(H-1B)は毎年上限があり、近年は選抜率が3〜4割程度と競争が激しいため、挑戦してもかなわず、カナダやオーストラリアなどへ方向転換する人も少なくありません。
在留資格ごとのアメリカ志向の傾向
外国人のアメリカ志向は、在留資格や目的によって異なります。技能実習や特定技能の人々は、日本で技能や職歴を積んだ後、より賃金水準の高い国へ移ることを検討する場合があります。ただしOECDが引用する調査では、技能実習生で「1年以内に他国へ移動」と答えたのは約5〜6%で、短期的な第三国移動は少数派です。中長期的なキャリア計画の中でアメリカが選択肢に入ることが多いといえます。
EPA看護師や介護福祉士は、国家試験合格後でも一定数が日本を離れています。合格後の離職率はインドネシア人で67%、フィリピン人で42%、ベトナム人で58%に上り、行き先は母国だけでなく英語圏の第三国も含まれます。医療人材は英語圏での需要が高く、アメリカも魅力的ですが、ビザ条件の厳しさからカナダやオーストラリアを選ぶ人も多いです。
留学生や高度人材層では、アメリカ志向が比較的強く、大学院進学や研究職、IT職を目指すケースが多く見られます。日本で学位や職歴を取得後、米国の大学院へ進みOPTやH-1Bビザで就職するルート、または日系企業からのアメリカ駐在などが代表的です。ただし、H-1Bに落選した場合は他の英語圏へ進路を変える例もあります。
アメリカ行きの魅力と現実的な壁
アメリカは経済規模、国際的なキャリアの価値、移民コミュニティの多様性などから高い人気があります。特に専門職では高収入が見込め、世界的に通用する経歴が得られる点が魅力です。生活面でも自由度が高く、多民族社会としての柔軟さがあります。
しかし現実的には、就労ビザの取得難易度、永住権取得までの長い道のり、医療費の高さ、治安や銃社会への懸念といった課題があります。このため、同じ英語圏でもカナダやオーストラリアを選ぶ方が、永住へのルートが明確で制度面の安心感がある場合も多いです。特にカナダは介護や特定職種で永住につながるパイロット制度を整えており、日本での経験を直接評価する仕組みがあります。
日本が定着先になるための課題
日本が外国人にとって「経由地」ではなく「定着先」になるためには、賃金や制度面の改善だけでなく、生活支援や将来設計の見通しを早期に示すことが重要です。技能実習や特定技能では、初年度からの生活・職場適応支援や、家族帯同の可能性を提示することが長期定着につながります。
また、職種別に競合国との比較を行い、日本に残るメリットを明確にする必要があります。ITや研究職では米国のビザ難易度を踏まえつつ魅力を高め、介護や製造ではカナダやオーストラリアに負けない条件を整えることが重要です。待遇だけでなく、生活の質やコミュニティ形成など、包括的な受け入れ環境の整備が求められます。
最終的に、日本が外国人に「この国で暮らし続けたい」と思わせるためには、経済的安定、制度的安心、社会的受け入れの三つをバランスよく提供することが不可欠です。アメリカ行きの夢は魅力的ですが、それと同じくらい日本にも長く暮らす価値があると感じてもらえる仕組みづくりが必要です。
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