働かない日本人?それとも働けない構造?
「最近の若者は働かない」「人手不足なのに日本人が来ない」といった言葉が、企業や高齢者の間で聞かれるようになっています。特に飲食業界、介護、建設現場などでは、求人を出しても日本人が集まらず、外国人の労働力に頼る状況が当たり前になりつつあります。しかしこの現象を単純に「日本人が怠けている」と片付けるのは短絡的です。
背景にあるのは、明らかに「働く意味」と「得られる対価」のバランスが崩れているという現実です。長時間の肉体労働や責任の重い仕事であっても、得られる報酬が少なければ、人はそれを避けるようになります。逆に、少ない時間で効率よく稼げる手段があれば、そちらに流れるのも自然なことです。
政府や経済界は「働ける人はもっと働いてほしい」と訴えますが、現場の日本人は「その努力に見合うだけの報酬がない」と感じているのです。これが「働かない」のではなく「働けない」あるいは「働く価値を見出せない」という、深刻な構造的問題です。
安すぎる労働報酬と“やりがい搾取”
特に問題視されているのが、低賃金業種における「やりがい搾取」です。例えば介護職では、身体的にも精神的にもハードな業務が多く、ミスが許されない責任ある仕事にもかかわらず、月給20万円に満たないこともあります。飲食店では、炎天下や深夜帯に長時間働いても、時給は最低賃金ギリギリ。こうした状況では、正社員になるよりもアルバイトや短期派遣を繰り返す方が、時間の融通が利き、精神的にも楽だと感じる若者が増えるのも当然でしょう。
また、昔ながらの「頑張れば報われる」という価値観が、今の若い世代には響きにくくなっています。昇給や昇進が見込めず、努力が報酬に結びつかないなら、無理に働くことを選ばないという合理的な判断が広がっています。
これは単なるモラルの低下ではなく、日本の労働市場がもはや「健全な働き方を報いる仕組み」になっていないという、深い制度的な問題を示しています。
投資・FIRE・副業という選択肢
こうした中で、日本人の働き方にも変化が見られます。株式投資や不動産収入、暗号資産などを通じて資産形成を目指す若者が増え、「働いて稼ぐ」ことよりも「資産で生きる」ことを重視する人が増えています。いわゆるFIRE(Financial Independence, Retire Early)という考え方も広まり、節約生活を続けながら働く時間を最小限に抑える生き方が市民権を得つつあります。
また、副業やフリーランスという働き方も一般化し、「本業は最低限、副業で自分らしい稼ぎ方をする」というスタイルが浸透しています。これは、必ずしも楽をしたいわけではなく、「自分の人生を自分でコントロールしたい」という意識の表れです。
つまり、現代の日本人は、必ずしも「働くこと」そのものを否定しているわけではなく、「報われない働き方」を避け、「より自分に合った稼ぎ方」を模索しているということです。
外国人頼みの前に必要なこと
このような現状を踏まえた上で、外国人労働者の受け入れについて考えると、単に「日本人がやらないから外国人にやらせる」という構造のままでは、将来的に制度としても社会としても破綻します。
なぜなら、外国人にとっても日本はもはや「魅力的な労働先」ではなくなりつつあるからです。円安の影響で母国に送金する価値が目減りし、低賃金・長時間労働の職場では離職も相次いでいます。技能実習制度や特定技能制度の見直しも進められていますが、根本的には「誰が働いても納得できる条件を整えること」が必要です。
つまり、「まず自国民で解決したい」という国の思いと、「そのために働ける環境が整っていない」という現実の間にある溝を埋めるためには、日本人と外国人の“使い分け”ではなく、“誰にとっても働く意味がある社会”を取り戻すことが、本質的な課題なのです。
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