広がる「外国人優遇」論
「外国人ばかりが優遇されている」といった声が、SNSや一部メディアで頻繁に見られるようになっています。たとえば、「中国人留学生に1000万円が支給されている」「留学生は毎月15万円もらっている」「外国人の保険料未納が膨大で日本人の負担になっている」など、刺激的な言葉が繰り返され、多くの人が「なんとなく不公平だ」と感じるようになっているのが現状です。
背景には、物価の上昇や賃金が上がらないこと、将来不安、少子化といった社会全体の閉塞感があります。そんな中で、「見えやすい対象」に怒りや不満が向けられてしまうのは、人間の自然な心理でもあります。ただし、そうした感情が事実に基づいているかというと、慎重な検証が必要です。実際に制度や統計を丁寧に見ていくと、広がっている情報の多くは一部に事実を含みつつも、全体としては誤解や誇張が入り交じっているケースが多く見られます。
「一部は本当、でも全体は違う」
「外国人留学生に1000万円支給」という主張は、文部科学省が実施している「次世代研究者挑戦的研究プログラム(SPRING)」が元になっています。これは博士課程後期の学生に対する研究支援制度であり、生活費や研究費として年間最大290万円、最大で3〜4年間支給されることから「1000万円」と表現されることがあります。ただし、この制度の対象は日本人学生も含まれており、2024年度の実績では対象者の約6割が日本人、残りの4割が外国人学生です。決して「外国人だけが支給されている」わけではありません。
また、「留学生は毎月15万円支給されている」という話も、全員ではなく「国費留学生」と呼ばれる一部の学生に限った話です。しかも国費留学生になるには厳しい選抜試験を突破し、成績や研究業績でも一定の基準を満たさなければなりません。対象となるのは留学生全体のわずか2〜3%で、多くの私費留学生はアルバイトをしながら学費を工面しています。
「外国人の国民健康保険料未納が深刻」という指摘についても、一部の自治体では外国人の収納率が低い傾向がありますが、その理由は単に「払わない」のではなく、雇用契約が不安定で収入が変動しやすかったり、制度を十分に理解できていなかったりするなどの要因が複雑に絡み合っています。このように、誇張された部分を冷静に整理すると、「一部は確かに事実だが、全体としては異なる印象になっている」ことが多いのです。
極端な二択ではなく、“中間の視点”を
現代社会は、情報が瞬時に広まり、しかもその多くが断片的で感情的です。SNSでは特に、「強い言葉」「簡潔な結論」が好まれる傾向があるため、複雑な制度の一部だけを取り上げた誇張表現が拡散されやすくなっています。その結果、「全部正しい」「全部間違っている」といった極端な対立構造が生まれ、本来必要な冷静な議論の余地が失われてしまいます。
しかし、現実の制度や政策は、常に白黒では割り切れません。「この点はたしかに問題がある」「でもこの部分は公平に設計されている」といった“中間の視点”こそが、誤解や対立を和らげる鍵になります。外国人に対する制度に不満や違和感を持つ人がいるのも当然です。その声を無視するのではなく、「その疑問はわかります。けれども、実際にはこういう背景があります」と丁寧に答えていくことが、社会の分断を避けるために重要です。
「全部正しい」「全部間違い」と決めつけるのではなく、「一部はその通りだけど、違う部分もある」という柔軟な態度を持つこと。それが、事実を正しく理解し、他者と共に生きるための第一歩です。
共生は「選択」ではなく「前提」
少子高齢化が急速に進む中、日本社会はすでに「外国人がいなければ成り立たない」段階に来ています。介護、医療、物流、建設、外食、ITなど、あらゆる業界で外国人材が現場を支えており、彼らがいなければサービスが停止してしまうという声も少なくありません。今後の日本にとって、外国人との共生は「選ぶかどうか」ではなく、「どう共に暮らすか」を問う局面です。
文化や言葉の違いがある中で摩擦が生じることもありますが、それを理由に排除するのではなく、制度や地域の支援、対話の機会を通じて乗り越えていく姿勢が求められています。共生とは、誰かを一方的に優遇することではありません。それぞれが役割を持ち、支え合いながら社会を成り立たせていくことです。日本で暮らす外国人の多くも、納税し、社会保険に加入し、地域活動にも参加しながら生活しています。
外国人を「問題」として見るのではなく、「共に生きる仲間」として見る視点が今こそ必要です。共生の実現は、外国人のためだけでなく、私たち自身の暮らしの持続可能性を守るためでもあるのです。
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