外国人労働者の新制度「育成就労」と転籍制限をめぐる課題
政府は2027年4月から、これまでの技能実習制度に代えて「育成就労」という新しい仕組みを導入する予定です。この制度の目的は、人手不足が深刻な分野で外国人を受け入れながら、一定の技能を身につけてもらうことにあります。大きな変更点の一つが「転籍」、つまり働く職場を変えるルールです。
提示されている素案では、全17分野のうち、介護や建設といった専門性を要する8分野では2年、それ以外の9分野では1年が経過すれば転籍が可能になるとされています。従来の技能実習制度では原則3年間は転籍できなかったため、これと比べると大きな進展です。
従来の制度は「技術移転」を名目にしつつ、実際には労働力確保の側面が強まりました。その結果、劣悪な労働環境から抜け出せない、賃金未払いに苦しむといった事例が後を絶たず、国際的にも批判を浴びてきました。新制度はそうした問題を是正する狙いを持ちつつ、受け入れ企業の負担との調整が課題となっています。
転籍制限を短縮する利点
転籍制限が1〜2年に短縮されることにはいくつもの利点があります。
まず第一に、労働者が不適切な職場環境から早く抜け出せる点です。これまでは3年間の拘束期間があり、不当な扱いを受けても動けないケースが多くありました。制度の変更によって、一定の期間を過ぎれば自由に職場を変えられるようになるため、失踪や不法就労といった問題の抑制につながると考えられます。
第二に、企業の側にもプラスの効果が期待されます。転籍が可能であれば、労働者が流出しないよう職場環境や待遇改善に努めざるを得ません。その結果、労働条件の底上げが進み、市場全体に健全な競争が生まれます。
さらに、国際的な評価の改善も見込めます。技能実習制度は「現代の奴隷労働」と揶揄されるほど批判が強く、国際社会からも改善を求められてきました。転籍の自由度を高めることは、日本が制度改革を進めていることを示す重要なメッセージになります。
想定される問題点
一方で、制限期間の短縮には懸念も少なくありません。
もっとも大きな問題は、受け入れ企業の投資が無駄になる可能性です。教育や日本語指導、現場での育成にコストをかけても、1〜2年で労働者が他社へ移れば、企業にとっては大きな損失です。特に介護や建設といった専門性の高い分野では育成に時間がかかるため、企業が採用をためらう要因になりかねません。
次に、人材が都市部や大企業に偏るリスクがあります。労働者が条件の良い職場を求めるのは自然ですが、地方や中小企業における人手不足はさらに深刻化する恐れがあります。
また、制度設計そのものが複雑になるという指摘もあります。分野によって制限期間が1年か2年かに分かれるため、労働者や企業が制度を正しく理解しにくくなる可能性があります。申請や許可の手続きが煩雑になれば、せっかくの制度改革も形骸化してしまう危険があります。
他国との比較と日本への示唆
海外の制度と比べることで、日本の特徴が見えてきます。
ヨーロッパでは、多くの国が最初の雇用主で一定期間働くことを求めていますが、その期間は半年ほどであることが多く、その後は比較的自由に転職できます。イギリスの技能労働ビザでも、新しい雇用主が認可を受けていれば転職可能です。つまり、労働者の自由度は高いといえます。
一方で、中東の一部には「カファーラ制度」と呼ばれる仕組みが残っており、雇用主の許可なしでは転職ができません。これは労働者を強く拘束する制度として国際的に批判されています。
この比較から見ると、日本の1〜2年という制限は、欧米先進国よりは厳しく、中東諸国よりは緩い「中間的な立場」にあると言えます。企業の育成コストを守りつつ、労働者にも一定の自由を与えるという妥協的な仕組みです。
しかし、制度を機能させるには手続きの透明化と迅速化が欠かせません。また、分野ごとに異なる制限期間について合理的な説明を行い、労使双方の理解を得る必要があります。さらに、不当な扱いを受けた労働者を救済する窓口や監督体制を整備しなければ、制度への信頼は得られません。
「育成就労」は単なる労働力対策にとどまらず、日本社会が外国人とどう共生するのかを映し出す試金石です。制度の運用次第で、日本が選ばれる国になるのか、それとも不信を招くのかが大きく変わります。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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