ビザ取得は本当に難しくなっているのか
ここ数年、日本でのビザ取得に関して「以前よりも厳しくなった」という声を多く耳にします。実際、制度改正や審査の運用見直しが相次ぎ、かつては比較的容易に取得できた在留資格でも、今では細かい要件を満たさなければ許可が下りにくくなっています。これは特定のビザに限らず、経営・管理ビザ、就労ビザ、特定技能、留学ビザ、家族滞在ビザなど幅広い分野で共通する傾向です。
審査では、申請書類の整合性だけでなく、申請人や受け入れ先の背景、計画の実現性、生活の安定性など、多面的な要素が重視されるようになっています。こうした厳格化は制度の適正運用を目的としていますが、現場感覚としては「以前より難しくなった」と感じるのも自然なことです。
経営・管理ビザ改正が示す方向性
最近の象徴的な事例が、外国人が日本で起業する際に取得する「経営・管理」ビザの大幅改正です。従来は資本金500万円以上、または常勤職員2名以上の雇用という条件のいずれかを満たせば申請可能でしたが、今後は資本金3,000万円以上に加え、常勤職員1名以上の雇用を同時に満たす必要がある見込みです。
この改正は、資金面と事業運営能力の両方を確実に担保できる外国人のみを対象にする狙いがあります。背景には、事業実態のないペーパーカンパニーや、不動産購入を目的とした法人設立など、制度の趣旨に合わない利用が増加したことがあります。こうした問題を是正し、真に日本経済や雇用に貢献する事業者だけを受け入れる方向へ舵を切ったといえます。
しかし、この改正により、小規模での起業や資本力の限られた挑戦は難しくなり、日本に多様なビジネスモデルが根付く機会を減らす可能性もあります。一方で、政府は別の分野で外国人受け入れの間口を広げています。
厳格化と拡大――特定技能の位置づけ
経営・管理ビザや一部の就労ビザが厳しくなる一方で、政府は「特定技能」制度の拡大に力を入れています。特定技能は、介護、外食、建設、製造など、人手不足が深刻な14分野で外国人を受け入れるための在留資格で、比較的取得しやすい部類に入ります。近年は対象分野の追加や受け入れ人数の上限撤廃など、制度拡充の動きが相次いでいます。
この背景には、日本の人口減少と労働力不足があります。特に地方や特定産業では、日本人だけでは必要な人手を確保できず、外国人労働者なしでは業務が回らない状況が広がっています。政府は、経営・管理ビザのような高い資金力や経営能力を求める資格と、特定技能のように即戦力労働力を補う資格とで、受け入れ方針を二極化させているのです。
つまり、日本は高度人材や経営者層には高いハードルを課し、同時に人手不足解消のための労働力受け入れは拡大するという、選択的な外国人政策を進めています。
日本の将来予測と政府の思惑
今後の日本は、高齢化と人口減少がさらに進み、労働力不足が慢性化すると予測されています。国内で人材を確保できない産業や地域では、特定技能をはじめとする外国人労働者への依存度が高まるでしょう。一方で、国家の経済基盤や安全保障の観点から、無条件に全ての外国人を受け入れるのではなく、分野ごとに明確な線引きを行う方針が続くと考えられます。
経営・管理ビザの厳格化は、日本で事業を行う外国人の質を担保し、制度の信頼性を高めるためのものです。一方で特定技能の拡大は、即戦力労働力の確保という現実的課題への対策です。政府の思惑は、この二つをバランスよく運用し、日本経済の持続可能性を確保することにあります。
つまり、日本の外国人政策は「全体的に厳しくなっている」という単純な話ではなく、「高度な分野は選抜型に、人手不足分野は拡大型に」という二面性を持った戦略へと進化しているのです。今後はこの傾向がさらに強まり、外国人が日本で働く、あるいは起業するための戦略も、この二極化を踏まえて設計する必要が出てくるでしょう。
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